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聖職の碑 [図書館に行こう]

新田次郎の山岳小説がとっても好きである。
今回読んだのは『聖職の碑』。



新装版 聖職の碑 (講談社文庫)

新装版 聖職の碑 (講談社文庫)

  • 作者: 新田 次郎
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2011/06/15
  • メディア: 文庫




舞台はお盆に登ってきたばかりの中央アルプス木曽駒ヶ岳。
大正時代、長野のある小学校の修学旅行での木曽駒登山中、
総計11名が遭難した大遭難が描かれている小説である。


興味深いのはその遭難の遭難碑なるものが建てられたのだが、
その碑の名前は「遭難碑」でも「慰霊碑」でもなく、「遭難記念碑」。
あたかも遭難を記念するかのような慰霊碑なのだ。
なぜ「記念碑」なのか。
そんなことも描かれているのが、とても面白く熱くなる小説なのだ。


大正時代の登山。
子供たちの生死を分けたのは、暴風雨から身を守るための茣蓙だった。
嵐に茣蓙が吹き飛ぶ中、他人の茣蓙でも奪いとれた子供は助かり、
身を守る術を持たなかった子供が亡くなった。
その遭難は、近年のトムラウシでの遭難事故を彷彿させるものがあった。


この小説が描いているのは遭難だけれど、本当に描きたいのは
なぜ修学旅行に登山だったのか、そしてすごいのが遭難で子供たちを
守ろうとした教師の姿勢なのである。こういう教師が昔はいたのだ。


そして長野はこのような事故があっても修学旅行の登山を中止にはしなかった。
山を抱える長野が山を捨てて何が残る。
この遭難が長野の修学旅行登山の出発点となったのだ。
事故があったからこそ、事故を起こさず修学旅行に登山を行おう。
私は小さな山のサークルに所属していたけれど、そんなサークル顔負けの
事故を起こさないための前準備が、各学校で行われていた。
そんな取り組みが本当にすごいと思う。


新田次郎の多くの本が実在の人物を扱っていて、その伝記的な小説が多い。
この小説もやはり実話に基づいているのだが、今回は小説の後編で
小説を書くまでの取材過程も盛り込まれている。


大遭難は起こり、11名の死亡者が出た。
けれど、生存者もまたいたのだ。
小説が書かれた当時、その生存者はまだ尚生きていて、
彼らのその後の生き様もまた垣間見れることのできる小説であった。


この小説、おもしろいなぁ・・・。


新田次郎熱、再燃。次は『アラスカ物語』か。
これ、読んだのではなかったけ?内容が全く思い出せない。。。
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